Epic Theft世界樹の迷宮メインの二次創作とか語りなブログ。
旧世界樹のめいろですが別に中身なにひとつかわってません。
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    episode0:回帰 09:06
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       羊皮紙の上を滑るペンの動きは思いの外鈍く感じた。
       そんな違和感は一つの事実を彼に気付かせる。思えば、自身に授けられた名と同等に寄り添った筈のその単語を、彼自身が筆に認めた事は意外なほど少なかったのだ。
       そして同時に否応無く気付かされる。“名”が持つ栄誉の中で自身が負った役割など、到底軽いものだったという事に。

       しかし…。

       今の自身の行為は、即ち“名”の持つ全てを…栄誉も重圧も含めた全てを…肩に背負うという事に相違ない。
       今更の感慨に彼の喉が低く唸った。抱えきれぬほどの財宝を目にした時のように。あるいは、身の毛もよだつ恐怖を目の当たりにした時のように。僅かな武者震いが羊皮紙にシミを作った。
       過りを斜線で訂正し彼は再び羽ペンにインクを吸わせる。そしてようやく羊皮紙の上にかの“名”は刻まれた。


       “assemblage”と――。

      「願掛けか?」

       鉄仮面の下から響いた声は予想外に軽やかな声だった。その声が石の壁に反響しさらに高い音と成り奥の通路へ逃げ、やがては完全に消え去る。…それ程の間を置いてもヴィルジールは未だ返答を終えていなかった。言葉の意を汲み取れずにいたのだ。
       ヴィルジールは羊皮紙から顔を上げる。そして怪訝に眉を潜め目の前に佇むギルド管轄者を見た。顔すらも兜で覆った全身鎧のその姿は、今し方通過してきたアプローチの両脇に聳えた像と然程違うようにも見えず、まるで人工物を相手に話しているような妙な気分に襲われる。

      「その名…『アセンブリッジ』とは遥かエトリアの世界樹を踏破したギルドの名だな」

       対して鉄仮面はその下を通し尚、ヴィルジールの胸中を見据えたかのように補足した。

      「良く知ってるな」
      「同じ世界樹の名を持つ迷宮の話だ、嫌でも耳に入る。そしてその名に肖ろうと同名のギルドを立ち上げる者は後を絶たぬのだ」 

       ようやく頭の言葉の意味を理解し、ヴィルジールは二度ほど眼を開閉した後に口角を吊り上げた。
       苦笑い。しかし秘められているのは嘲りでも無い。

      「ま、そんなところさ」

       重厚な甲冑を着こんだ時にも似た…それこそ、目の前のギルド管轄長の様に…肩の圧力がどれほどか和らいだ。成る程、噂話を囁く者達というものは存外に冷静らしい。肩を竦める自身の懸念こそ過剰な自意識だったようだ。

      「それとも、別の名前に変えろってか?」
      「いや、代表者さえはっきりしていれば構わない。だが留意する事だな。その名を冠したギルドは既に10を越えるが、何れも三月と経たず解散している」
      「んじゃ、今は俺らだけって事か」
      「そういう事になる」

       言葉を辿る僅かな吐息が無機質な面皮の下が微笑んだ事を知らせてくれた。
       再び沈黙が戻る。
       ヴィルジールはギルドの名に続き自身の名を刻む。そしてこれより命運を共にする仲間の名を。…一人を除けば、その生い立ちは愚か、食べ物の嗜好すらも知らぬ者たちの名を。
       そうして完成した羊皮紙をギルド長に無造作に差し出す。

      「…何処かおかしいか?」

       羊皮紙を前に長い事無言で居る相手に不安を覚えつつ、ヴィルジールは舌打ちする。元よりこういった書類の相手は得意ではない。字を書くことすら億劫という性分だ。
       何時もならばこういった事は相棒に押し付けるのだが、今回ばかりは彼女は肯いてはくれなかった。
       無論、自身が率いるギルドの立ち上げとなる書であるのだから、彼女の言う事も解るのだが。

      「いや、問題はない」

       ヴィルジールの問い掛けよりさらにしばしの間を置いて、ギルド長は肯いた。

      「さておき、ヴィルジール・バルトとはお前か?」
      「…なんだよ?」

       金色の目に不審の火が灯る。しかしその瞳に映る鉄の塊には動じた様子も無い。それを体現するようにギルド長は、身構えるヴィルジールに対し欠片の躊躇も無く背を向けた。 少し待てとの言葉を残し。
       ヴィルジールは最早うんざりとばかりに悲嘆した。こういった時間はとかく長いものだ。例えそれが実際には一杯のエールを飲み干すのにかかる程の時間でしかなくとも。

      「…まだなの?」

       その声にヴィルジールは思わず身を竦めた。重苦しい空気の最中、それはあまりに場違いな調子であったから。そもそも今はあの鎧の下から聞こえた声、それ以外の声音を予想などしていなかったから。
       振り向けばそこには相棒の姿があった。四年前に出会って以来、ずっと共に歩んできたレンジャーの姿が。
       名はアルステーデという。

      「なんだよ」
      「遅いから見に来たの。何かやっちゃったりしてないか、って」
      「してねぇよ」

       “多分”…という言葉だけは、胸中で呟くに止まった。実際、ヴィルジール自身も何故待たされているかなど解っていないのだ。とは言え彼には省略したその一言を口に出す事は憚られた。実行した場合の展開が見えたからだ。

      「そういやな。『アセンブリッジ』ってギルド、もう10以上あるんだとさ」
      「ええ?どうして」
      「決まってるだろ。エトリアの世界樹を踏破した、英雄サマサマだからな。その名にあやかりたいんだろうさ」

       たった今ギルド長に聞いたばかりの言葉をさも自身の推測のように語りつつ、ヴィルジールは背伸びをする。英雄を自称する彼にアルステーデは小さな鼻をひく付かせた。

      「バッカみたい。あんた何て、末席を汚してたようなもんでしょ」
      「ま、そうなんだろうな」

       謙虚な返事は予想外だったのだろうか。アルステーデは虚を付かれた様にその瞳を瞬かせる。だがヴィルジールはただ、天窓から見える四角い青に視線を投げかけるだけだった。

      「じゃ、変えたの?名前」
      「いーや。そいつら皆、もう解散してるんだと」
      「…大した英雄サマね」

       耳元で跳ねる髪を弄りながらアルステーデも短い吐息を吐いた。

      「好都合じゃねーか。騙りだって思われてた方がさ」
      「何言ってるの。だったら、始めから『アセンブリッジ』なんて名乗らなければいいだけじゃない」

       口を丸く開き、左右の眉を非対称に歪め…アルステーデはこれまで幾度か繰り返した言葉を再び吐いた。
       ヴィジールは黙って背を向けたまま答えない。それに対しアルステーデも詰問を続ける素振りを見せない。

       二人が第一の世界樹の迷宮を擁するエトリアを離れ既に三年が経つ。
       そんな彼らが第二の世界樹の迷宮の噂を聞き、ハイ・ラガード公国へ向かう事を決めたのが半年ほど前だった。
       真新しい杭が並ぶ街道を商隊と共に延々と歩んできた。その護衛を引き受ける代わりとして荷の片隅に寝床を貰いながら。
       商隊もまたハイ・ラガード公国へと向かうのだと言う。目当ては無論、世界樹の迷宮の名に惹かれ集う人の波だ。
       長き旅路に二人は様々な事を話し合った。ギルドの立ち上げをどうするかと言う事はその最たるものだ。
       ヴィルジールは以前と…エトリアと同じで良いだろうと言った。それが『アセンブリッジ』だ。
       エトリアで発足したギルド『アセンブリッジ』は、世界樹の迷宮を踏破しその記録を公にすると同時に解散した。しかしギルドが消えようともその名だけは残るもので、彼らは三年の間その名に救われもすれば陥れられもする事になる。
       そんな実情を改めて思い返し、皮肉なものだとアルステーデは嘆息した。
       かつてエトリアの世界樹の迷宮が“消えた”と同時に、各々が目的を果たしたギルド『アセンブリッジ』は解散した。
       無論、前者は真の意味で消えてしまう筈も無く、例え現存する全てのルートが明かされたとて、樹海そのものには何の変化も無い。無いが、その事実に殆ど意味などありはしないのだ。
       万物の在り様などはまるで関係なく人々の心の中で迷宮は変貌し、神秘の樹海は終幕を迎えた。いくら聳える大樹を指差しその存在を声高に謳おうとも、次々とエトリアを去り行く人々の存在こそが、どんな言葉よりも明確に事実を証明した。今エトリアに存在するのは樹海に惹かれ集った数多の冒険者ではなく、資源の山とそれを得る為に訪れる者達だけ。
       そうして確かに在る樹海が人々の前から消え去ったにも関わらず、既に消滅したギルド『アセンブリッジ』は今も人々の中に存在しているらしい。それも、実態が見えなくなるほど肥大した張子の英雄として。
       アルステーデはまさに今、その残影を垣間見たのだ。目の前の男と、その言葉に。何より自分自身の中に。
       だからヴィルジールの投げやりな提案にアルステーデは眉を潜めた。既に亡きギルドの名を背負う事で同時に背負うしがらみを、より嫌っていたのはヴィルジールだったのだから。
       しかしそれでも、彼は違う名乗りを上げる事だけは頑なに拒否するのだ。

      「待たせたな」

       気付けば目の前にはあの甲冑がまるで飾り物のように立っていた。しかし当然それは飾り物ではなく、ゆっくりと動く腕は一つの封書をヴィルジールの前へと運ぶ。

      「お前宛の文を預かっている」
      「この国には始めて来たんだぜ。文を送られるような相手なんざいねえよ」
      「ああ。送り主はこの国の者ではない。此処より西に位置する国の、然るやんごとなきお方だ」

       言葉を連ねられればられるほど状況の把握は難解となった。これ以上聞いても無駄と悟り、ヴィルジールは筒に刻まれた名を確認する事に務めた。
       封蝋に押された印にも覚えは無い。しかし、色付きのインクで描かれた文字が彼の瞳に映った途端、それが既知の存在だと示すように金色の瞳は大きく見開かれた。

      「お前に宛てられた物で間違いあるまい?」
      「ああ。そうらしいな。サンキュ」

       ぶっきらぼうに答えるとバックパックに筒ををねじ込む。誰からなのかと問い詰めるアルステーデの声を無視し、苦虫を噛み潰したような顔のヴィルジールはギルド長に視線を向ける。

      「で、登録証は受理されたのかよ?」
      「ああ。仮登録は完了した。だが正式に受理されるには大公宮での試験を乗り越えねばならん」
      「試験?ギルド登録に試験があるの?」

       随分お堅い国だとアルステーデは首を傾げた。彼女が何時の間にそこに居たのか…等という事は気にも留めずギルド長はそうだと答える。ほとんど稼動する余地が無いと見える兜が、僅かに肯いたように見えた。 

      「ハイ・ラガード公国でギルド登録をした冒険者は、同時に公国民として登録される事となるのだからな。国籍のみを求めた放浪者の存在も予測できる故の、いわば選別だ」

       その返事にアルステーデは少し舌を出した。うっかり失念してた自身を窘めるように。

      「そうね。それじゃ千客万来大歓迎ってワケにはいかないのだろうけど、でも随分堅苦しいのね」

       とは言いつつも、アルステーデにも実情は理解出来なくもなかった。エトリアで生まれ育った彼女は自身の成長と共に町の変貌を垣間見て来たからだ。
       エトリアもかつて大陸中から冒険者達を招きつつ、その扱いに苦慮していた。元々エトリアは多数の冒険者を受け入れるほどの懐も無く、急激に増加する滞在者に様々な問題を抱えたもの。
       最盛期には人口の少なく無い割合を異国の風来坊達が締め、そもそもエトリアの籍を持つものとて多くは『世界樹の迷宮』に呼び寄せられた元異国民だ。そんな状況下で執政院は常に様々な問題を抱え様々な方法で解消して来た。
       おそらく国籍を与える等という根無し草にとっては鴨が葱を背負ってきたような話であっても、ハイ・ラガード公国にとっては選び抜いたひとつの打開策なのだろう。

      「無論、公国民である以上、公国民としての義務は発生する。しかし同時に権利も得られるのだ。放浪の民であるお前たちにとって悪い話ではあるまい?」

       ヴィルジールは苦笑して首を振った。

      「他所に来たら他所の流儀に従うさ」
      「それが賢明だな、新米諸君。規則に従い、且つ柔軟な行動を心がけるべきだ。 この街に滞在し、迷宮踏破の栄誉を我が物にせんとするならば」

       その論調は画一的でありながら何処か大仰にも聞こえた。
       “よく言うぜ”ヴィルジールは口の中で呟いた。


       **


       冒険者ギルドを後にした彼らは酒場へ通じるゆるやかな上り坂を行く。他の仲間と合流する為に。
       ぐるりと円を描くようなこの通りがハイ・ラガード公国のメインストリートだ。天高く聳える世界樹を中心とし、その幹に張り付くように構成された街並みは言わば縦に長い。東西南北ではなく、天へ向かって詰み上がるよう構成されている。故にメインストリートは傾斜を抑える為螺旋を描くよう延びており、その合間に抜け道として急斜面や階段が点在する。
       通りは広くよく整備されていた。猥雑な落書きが一面に広がった壁も無ければ、裏通りから異臭が漂ってくる事も無い。今は灯っては居ないが街頭も多い。道行く人々の服装も皆小奇麗であり、衛士と思しき姿も多いが物々しい印象はあまり無かった。エトリアとは随分雰囲気が違う。

      「ねえ」
      「あ?」

       彼方に関門を見る事が出来る大通りから、高原に伸びる街道を眺めていたヴィルジールは呼ばれるままにくるりと首を動かした。強めの風に靡いた銀髪が頬に張り付く。

      「手紙って、誰から?」

       アルステーデの言葉を聞くや否やヴィルジールの眉は露骨に不機嫌だと言わんばかりに釣りあがった。一度彼女の姿を捉えたはずの視線は、再び街道の方へと逃げてしまう。彼方に見える縁も所縁も無い馬車を無意味に追いながら。

      「解ってンだろうが」
      「解るわけ無いでしょ」
      「お前だろ、知らせたの」

       バックパックに突っ込んだ筒を取り出しアルステーデに投げつける。一度は取り落としそうになりながらもアルステーデはそれを掴み取った。そして同時に彼の不機嫌と臆断の理由も理解したのだ。

      「…リュカ…」

       そこには三年前。始めて『アセンブリッジ』の言葉を“名”として発した者の名が、刻まれていた。その文字を音声にしてみれば、さらにヴィルジールの首は他所へと向けられる。それを尻目に封を解いたアルステーデは、一時も惜しいとばかりに乱暴に筒を逆さまに振った。

      「あっ…」

       が、“そうすれば丸められた羊皮紙が少し顔を出すだろう”というアルステーデの目論みは見事に外れた。正確に言うのなら、確かに彼女の目論み通りの事も起こった。が、中身は一つでは無く、金属の様な堅い何かがアルステーデの指にぶつかり跳ね、そのまま石畳にぶつかりもう一度葉ね、さらに硬い音と共に幾度か跳ねた後にようやく止まった。

      「ばーか」

       アルステーデが手を伸ばすよりも早く、ヴィルジールが悪態をつきつつそれを拾い上げた。握り締めた物をじっと見つめながら、彼は舌打ちと共に嘆息する。
       そんなヴィルジールの様子を横目にアルステーデは同封されていた羊皮紙に目を落とす。その頃にはアルステーデにも、彼が拾い上げたものが何なのか想像が出来ていた。 

       
      ――来たるべき日の為に英雄の先導者たる証を送る。
          去りし日の英雄へ、去りし日の先導者より――

                          Lucas・Fallot



       短い文面を読み終えるとアルステーデは身じろぎ一つしない男を見た。僅かに恐れを抱きながら。
       アルステーデは目の前の牙を剥く野犬の如く殺気だった相手が、今にも羊皮紙を奪い取りに(そして破り捨てに)来るのではないかとも危惧したのだ。が、幸いにもそれは無かった。ただもう一度舌打ちし、手にしたものをアルステーデに投げて寄こしたのだ。
       アルステーデは思わずそれを両手で受け止める。受け止めた後、ゆらりゆらり左右に揺れながら落ちる羊皮紙を慌てて掴み戻す。それから彼女は、ようやくゆっくりと自身の掌を開いた。
       そこに在るのは、久方ぶりに見た確かな証。
       三年前エトリアにて樹海踏破の証として授与された、唯一無二の勲章だった。
       アルステーデは冷たい金属に確かな熱を感じた。目頭がじんと熱くなる。その奥にかつての面影を見たかのように。

      「お前が持ってろよ」

       そんな彼女を見てか、ヴィルジールは早口に言い捨てた。一瞬意味が判らず呆けたアルステーデだったが、直後勲章と勲章を持つべき“新たな先導者”の姿を交互に見やり、半ば悲鳴のような声をあげた。

      「ええ!?だって、ヴィルに宛てられてるんじゃない!」
      「知らねえよ。俺は頼んだ覚えも無いしあいつに知らせても無い」
      「私だってしてないよ!」

       非難の声が聞こえていない訳は無いだろうが、ヴィルジールは再び歩き出した。先ほどよりどれほどか速度を上げて。
       歩きながらヴィルジールは自身の手に残った感触を思い返すよう指を動かした。
       あの輝く日々の結晶であるものを。
       ただの金属の塊だ。鮮やかな絹布で装飾が施されただけの。…そう胸中で呟きつつもヴィルジールは名残惜しそうに手のひらに残った違和感を親指の腹で撫でた。

      「…?」

       ふとすれ違った冒険者と思しき一団を視界の端に止め、ヴィルジールは思わず立ち止まった。気付けば同じような集団は周囲に幾人か居る。そろそろ目的の酒場も近い、この辺りが冒険者の集う区画なのだろう。
       不意に胸にじわりと熱い痛みが滲む。望郷の念にも似ていたが、彼がこの公国に来てまだ間もない。

      「ちょっと、待ってよ!」

       その声にヴィルジールはゆっくりと踵を返す。
       ようやく追いついてきたアルステーデが膝に置いた手で上半身を支えつつ俯いた。その肩が大きく上下している。同時にクセの強い赤毛がふわふわと揺れる。四年前に始めて出会った日から変わらない髪を。伸びるたびに切り揃え、何一つ変わっていないその姿を。
       エトリアの樹海を駆け抜けたあの日から、まるで。

      「あ、居たよ。あそこ」
      「随分、時間が掛かかったんですね?」

       背後から聞こえた声。幼くも聞こえる少年の声と、丁寧ながら少しぎこちない少女の声。ひんやりとした手に触れられたような感覚で耳に流れ込むその声に、ヴィルジールは弾かれたように振り返った。
       その声の主は。その姿は―――…。

      「てっきり、迷子にでもなってるのかと思ってたけど」

       続けて聞こえたのはせせら笑いを伴った少年の声だ。自身を見上げるアーモンドのような瞳に、ヴィルジールの意識は急速に現実へと引き戻される。

      「…なに?人の事ジロジロ見てさ」

       欠片の愛嬌も無い視線と口調は幸いにもヴィルジールを覚ます方へと働いた。徐々に目の前の幻はぼやけやがて消えて行く。
       そうして冷静になった彼は、次に大声で笑い出した。今し方自身が見た白昼夢を自嘲して。
       少年はぎょっとして顔をしかめる。予想した反応…嫌悪や怒りを露にされる事…にならなかったのが聊か不満なのか、興をそがれたと言わんばかりに肩を竦めた。

      「手続きは無事済まれたのですか?」

       その後ろには衣装のような装飾を施したローブを着た黒髪の少女が、やや距離を置きながら様子を伺っていた。正直、その珍妙な姿に慣れるにはもう少し時間が必要そうだとヴィルジールは思う。

      「手続きは、OKだって。未だ大公宮で入国試験があるみたいだけど」

       無言のままのヴィルジールに変わってアルステーデが答えた。

      「ボクは知っていたけどね」

       少年がわざわざ一言付け加えた。アルステーデと魔女の仮装の少女が同時に溜息を付く。
       少年はジェイク。少女はシーヴという。今し方ヴィルジールが羊皮紙に刻んだ名と同じ。つまり彼らもギルド『アセンブリッジ』のメンバーだ。

      「で、行かないの、大公宮?ジンマルが待ってると思うよ」

       唖然とする一同の様子は意に介さず、ジェイクは上り坂の先を指差した。

      「…行くさ。そりゃあ、な」

       此処にいない仲間の名とその居場所を聞いた事で、ようやくヴィルジールも肯く。どうやら最後の仲間である遠国の剣士は、これより目指す場所へ先に行っている様子。ヴィルジール達が向かうと告げた冒険者ギルドとは逆方向だ。…先にジェイクが言ったとおり「迷子になってるのかと思った」か、そうでなければ、ヴィルジール達が冒険者ギルドからそのまま大公宮へ向かったものと考えたのだろう。

       * 

       広く緩やかな道は続く。街道からはよく見えた大公宮の建物もここからは見えない。辛うじてその巨大な建築物の一角を視界に入れる事は出来るが、街の上層部に位置するそれは他の建造物に遮られ全貌を見る事は出来なかった。
       ヴィルジール達は更に昇ってゆく。すれ違う人々と人々の在る情景に、かつて居た場所を重ねながら。
       風が吹く。前方を歩くシーヴの黒髪が流されヴィルジールの前を横切った。その隣ではジェイクが帽子を押さえている。止め具の付いた紐をはためかせながら。
       あのギルド管轄長はおそらく知っていたのだろう。あるいは途中で気付いたのかもしれない。彼らがエトリアの世界樹を踏破したギルド『アセンブリッジ』である事を。
       それでも気付かぬ素振りを通したのは、自身の誤解を訂正するのが億劫だったのか、それともヴィルジールが肯定しなかったからだろうか。いずれにせよ、彼にはありがたい事だった。
       英雄『アセンブリッジ』は既に居ない。この世界の何処にも彼らの姿はもう、無い。
       今ここに居るのは、新たな指導者と新たなメンバーの元立ち上げられたただの『アセンブリッジ』なのだから。
       今は、未だ。 





      「2、始めました」って感じで2もちらほら文章書いてこうと思います。
      が、前回のようにガッツリ重たい感じではなく、こんな感じで気楽に軽めに行こうと思います。書きたいトコだけ書くような。なるべく短文で。
      2も1と比べて、いろいろあるものの全体的にはライトな雰囲気なので…とか言いつつ、結局趣味に走りそうなので、どうなるかは解りません
      でもって、今回は最後まで書くかも解りません!根性が続く限りは書きますが…。
      一応、25Fボス戦や設定周りの捏造エピソードは書きたくてウズウズしてるので、やりたいとは思うのですけど。
      で、1の時は全部自分でテキストとってやってたのですが、今回はWikiと、『路地裏の冒険者達 』さんのテキスト集参考にさせて頂いてます。パス入力時のテキストはwikiに無いので(現時点では)超助かります。
      とは言え前回と違って今回はテキスト量が膨大なので、脳内設定作る際に記述を見落とす事も多くなりそうで、即ち1の時よりさらに粗が増えるかもしれませんが、ご容赦くださいませ。

      さて。
      今回はエトリアからの流れとギルド結成まで…なのですが。最初にひとつ土下座な事が。
      既に突っ込まれてる事と思いますが、「パスのおまけを手紙で貰う」というネタ、既に『銀杏ヶ淵』さんがやられているネタなんですよね!
      最初は違う話にする方向で頭ひねって見たのですが、結局思いつかずにこうなってしまったのでした。何というか、申し訳ないです。
      先方様にも報告して了承頂いた上で出しておりますので「お前パクってね?」的な突っ込みは許してくださいませ!

      勲章は本プレイ中でもシナリオクリアまでは本当に一度も誰にも装備させてなかったりします。
      その辺りはロールプレイってヤツですね!
      ロールプレイといえば、今回、ロールプレイ心を擽るイベントが多くてわくわくしたものです。
      居眠り衛士、糸忘れ衛士、苦しむリス、ひまわりさんにおねだりされまくるクエスト等。
      これら、ゲーム上は別になにしようがデメリットは無い(と、思うのですが。一応財布盗むのはセーブして試したのですが、パクって次に会った時点では何も無かったです。もっと先に何かあるって場合は解りませんが…)ので、有利に進めるのであれば財布は盗んで衛士は見捨ててクエストアイテムはひまわりさんに処分してしまえば良いのです。が!
      ここで、キャラ設定に足引っ張られるわけですよね!
      「あれっ、キミのところのパラディン心優しく正義感が強いって設定だったよねえ?あ、もちろん、後からペナルティなんてありませんよ?どうぞどうぞ、こんなモブ衛士なんて見捨ててくださって結構です^^」みたいな開発者の声が聞こえて来そうで、なんとも歯がゆいものです。
      この場合「ペナルティ無し」という事で純粋に良心に訴えられてるところがミソだと思いますね。設定を何処まで貫くの?という。
      ま、うちの心優しきパラディンは2ではいませんし、1の小説では糸忘れたヤツら見捨てましたがね☆
      うん、でも、なんかね、リス以外は善人ぶっちゃったんですけどね…。五層の衛士はかなりキツかったですね。


      以下、補足的に世界樹踏破後のエトリアについて脳内設定を。
      このブログに掲載してる1小説のラストで書いた部分なので、読んでる方には要らない説明なのですが、読んでない方の為に少しだけ書いて置きます。
      エトリアは迷宮踏破後、比較的安全になった素材供給地である樹海とそれなりに上手く共存しています。
      が、鉱石や野草(用は採取アイテムですね)等はルートも確立され安定して供給できるようになった分、物価も安定してしまったり、今まで居たエトリアに金落としてくれる冒険者ではなく、きっちり商売のルート持った人たちが入ってくるようになったので、エトリア経済はやっぱりちょっと衰退してます。冒険者相手の商売人は職を失う人も少なくなかったり。
      第五階層に関しては結構取り締まり厳しくなってまして、オレルスが頑張ったり、初代『アセンブリッジ』メンバーの一部も残ったりして、滅んでしまった前時代の人々の事を学んだりしつつやってます。
      モリビトとは基本的に不干渉状態です。彼らは人間の侵略を恐れ枯レ森の奥へと引きこもってしまってますので(次に人間が来たら降伏するしかないと思っています)、今のところ大きな諍いはありません。そんなところでしょうか。



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