Epic Theft世界樹の迷宮メインの二次創作とか語りなブログ。
旧世界樹のめいろですが別に中身なにひとつかわってません。
絵とか小説とかあるよ。CATEGORIESからどうぞ。
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公式とは全く関係ありません

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    Ghost on the wind 21:24
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      久々のSSです。
      リプレイ小説じゃないんですがカテゴリつくるのめんどいのでSSは全部これで。


      シーカーさん二人のSSです。片方は自ギルドの。もう片方はみつかさんのギルドのシーカーさんです。

      先方さまのシーカーさんが大変けしからん可愛さでしんぼうたまらなかったので書きました。
      萌えの赴くままに大分好き勝手やりました。
      みつかさんには色々お許しいただき大変感謝しております。

      とっても楽しかったので、また他所で可愛いシーカーさん見つけたら(別に緑じゃなくてもいい)
      それでいい絡みネタ思いついたら、こういうの書きたいです。
      まとまったら短編集にしてもよさそうだし。
      自ギルドのシーカーさんによる他所のギルドのシーカーさん語り短編集のような。
      いわゆる交流ネタってやつだと思うのですけど、
      でも私の場合「何か接点を」ってなると「仲良くしましょう」より
      「あ、じゃあ一戦交えていいっスカ!」ってなりガチなのがアレなのですが。
      少年漫画仕様です。脳筋。

      それでは続きから
      ちなみに世界樹のせの字も出てきません。
      っていうか世界樹要素一切ありません。
      一応舞台は世界樹4より二年前くらいという事で。

      ***


       随分と明るい夜だった。
       空には満ちた月が煌々と輝き生憎な事に雲は疎ら。仕事をする上でその条件を良と見るかどうかはそれぞれだろうが、少なくとも私には明るすぎた。
       城外から通じる地下水路の出口。そこで私はじっと息を潜めていた。可能ならば天候も選ぶに越した事はないが、明日には水門が開き水路の水嵩は増すのだそうだ。潜入には今日が最も適した日ということだった。 
       忽然と視界が陰り、また明るくなる。薄い雲の欠片が月を横切ったのだろう。
       さて。そろそろだろうかと、私は空を仰ぎ機会を伺った。
       ここから一番近い小屋まで30ftほどだ。しかしそれはおそらく穀倉。城内へ入るための扉へは、そこからさらに15ftほど離れている。そこまで、何の遮蔽もない広場を突っ切らなければならない。
       やがて黒い塊…分厚い雲だろう…が、月に迫った。それを見届けフードを深く被りなおす。そして景色の明度が極端に落ち込んだ瞬間を見計らい、私は身を乗り出した。雲が月を通過するわずかな間に、水路の出口から扉までの空間を一気に駆け抜ける。クロークがはためき、空気の裂ける音が耳に残った。
       扉までは問題なくたどり着いた。宵の風に晒された冷たい木戸に耳を当て、何の音も返らないのを確認して錠を空ける…が、鍵穴がない。内側から閂がかけられているのだろうか。止む無く別の道を探る。
       それはすぐに見つかった。側面の壁の上部に換気用と思しき小窓が並ぶ。十分だった。壁を登り木枠にクロークの裾を巻きつけ強く打ち据えれば、大人しくここを開けてくれた。
       その小窓から城内へ。予想通り厨房だった。微かな腐敗臭を伴う水の臭いが煩わしく、私は速やかに通路へと出る。
       
       ようやく、スタートだ。

       やるべき事は言葉にすれば実にシンプルなものだ。ここの主の寝首をかけばいいだけ。生け捕りにしろだの、口を割らせろなど、そんな仕事と比べればよほど。が、あくまでそれも比較すればの話で、実行に際してはやはりシンプルにはいかない。
       この狭く薄暗い使用人通路は歩くにずいぶんと快適だが、すぐに解放的な見通しの良い回廊へと繋がってしまうだろう。そこからは常に存在を殺して駆け抜ける事になる。
       しかし、それよりも随分と早い段階で。私の直感が警鐘を鳴らし始めた。
       自然と足が止まった。意図してとめたのではない。見えない壁に触れたか、あるいは形を持った冷気に頬を撫でられ身を竦ませたような、そんな状態に近い。
       動きのなかった空気に僅かな波紋を感じる。皮膚を刺す緊張感は戦場のそれに近かった。

       ……何者かが居るようだ。近くに。

       衛兵や使用人の類ではない。明確な殺意を持った何かが単独で存在している。
       目標の子飼いの番犬かだろうか。しかしそんな話はラルウァからは聞いていない。彼女の情報網を潜るほどの存在か、そうでなければイレギュラーか。だとすれば何のために?
       途端に肌が泡立ち、思わず背後を振り返った。既に退路は詰められている、そんな妄想に取り付かれ。
       しかしそこには何者もいない。その可能性だってありえない。少なくとも手前5ft先の扉を通り過ぎるまでは、誰もいるはずはないのだ。
       気を取り直し、私は先にある脅威に神経を注ぐ。
       幸いにもそれは…非常に鋭利でありながら鋸歯状の凶暴さをも併せ持つ殺意の矛は、まだ私に向けられてはいないようだ。宵の気に混ざるノイズを察知しつつも、私の存在を知覚したわけではないのだろう。
       ならば、その前に、終わらせてしまおう。今回は早々から荒事になりそうだ。
       闇を凝視した。頬に、髪に触れる空気の乱れに意識を研ぎ澄ませる。息を殺し暗がりに身を溶かすよう歩を進める。
       程なくして見つけた。カーテンの陰に潜むそれを。私と同じよう、漆黒のクロークを纏い闇に擬態したその姿を。
       この状況下で最も相応しい手段を瞬時に選択し、私は床を蹴った。
       4歩目を踏み込んだ時だった。突如空気が逆流し、殺意を含んだ気迫が一気に押し寄せてくる。予測より早い、しかし速度は落とさず双剣を抜き払う。そのまま身を屈め懐に飛び込んだ……が、僅差で届かない!
       逃げながら抜こうとする敵の手を柄で打ち、追撃する。何とか不意打ちの体裁はついた。
       抜く事は許さない。声さえ上げさせはしない。その前に仕留める。逆手に構えた刃で防御しつつ間合いを詰める。相手の舌打ちが聞こえるほどの距離まで肉薄し、喉笛を狙い凪ぐ。
       ……外した。だが僅かな赤が糸を引いた。そのまま斬り下げれば終わり……だったはずが、私の手はそこで止まった。
       剣の軌道上に硝子細工のランプシェードを見止めた。先ほどまでは質素な布製のものが掲げられていたはず。意図せず城内の中心部まで踏み込みすぎたか。
       私は即座に退いた。それでも相手がアレを叩き割りでもしようものならば、巡回する衛兵達に即座に囲まれた事だろう。が、幸いにも敵はそうはしなかった。
       しかし、敵に得物を抜く猶予を与えてしまう。咄嗟にナイフを撃つか迷ったが、即時出た結論はNO。
       敵はそのまま流れるような動作で二本の剣を抜き、血の色の刃をこちらへと向けた。
       今度は向こうから仕掛けてきた。姿勢を低くし迎え撃つ。互いに剣を触れさせるような事はしなかった。ただ空を裂く音だけが淡々と場を支配していた。
       限界の一歩手前まで押し込んだ後、僅かに下がる。相手の歩調に合わせて退くと見せかけて踏み込む。狭い通路の中、ショートレンジでの紙一重の攻防が続いた。
       鼓動が高鳴る。高揚が緊張を上回る。
       もしこの場に立会人でもいたならば、随分と手ぬるい、退屈な打ち会いと見たことだろう。だが私はスイングのひとつ、ステップのひとつを常にギリギリの線で行っていた。おそらくは、敵も。敵は際まで私の動きを手繰った上で先を読んでくる。この一挙一動に触れ、撫で上げるように。
       ……気に入らなかった。ならば、その上前を跳ねてやろうか。
       黙々と駆け引きの定石を置いていく。捻りの無い型を作法通りに繰り返し、こちらのリズムに引き込むように。相手のフェイントに乗って見せるのもいい。
       僅かずつ敵のリアクションが早まる、そんな手ごたえがあった。だがここは持久戦だ。痺れを切らした方が負ける。
       切っ先が鼻を掠めてゆく。しかしまだ早い。髪の幾本かの手ごたえを得る。それでも、まだ。クロークの端が裂かれる。……次だ。
       飽きるほど繰り返された興のない一手を再び置く。そして正面から飛び込み双剣を払う。一旦ミドルレンジの際まで後退した相手の反撃を目視した後、私は切り払った剣先の下から鋭く敵を蹴り上げた。
       不意を付いた派生に相手が怯んだ。このまま、畳み掛ける!
       私の右腕は確かにその瞬間を予感していた。何時と変わらない独特の予兆に血が震える。…その、はずだった。
       これまでで一番重いあたり。だがそれも脈を絶つにしては軽い。軽すぎる。
       今度は私が舌打ちする番だった。切っ先が引いたのは敵のフード。肉を裂いた手応えもあったが、命を絶つそれとはまるで違う。
       引き裂かれたフードの下からは金色の髪が流れ落ちた。そしてその相貌が薄明かりの下に顕わになる。……女?
      「くっ…!」
       押し殺した呻き声で私は始めて敵の声を聞いた。……間違い無い、女だ。私が男であればどれほどか動揺したのかもしれないが、生憎そうではない。裂かれた頬から流れ落ちる血をめがけ、留めの一撃を叩きこむ。
       しかし敵は即座に長い髪に指を挿し入れ、私を目掛け投擲の動作を取った。見えぬ脅威を察知した私は反射的に追撃の刃を防御に回す。カチ、と小さな金属の手ごたえ。それを起点に加速した殺意の存在を肌が感じた。
       刃が知覚できない……いや、違う。ワイヤーか!
       目の前を横切ったそれが一瞬だけ光を浴び正体を現した。私は瞬時に双剣を交差し斜めに構え、その内側に身を置く。ワイヤーが二刀の刃に撒き付き、微かながら不快な音を立てる。鋭く柔軟な刃に囚われる事は免れたものの、防ぎきれなかった先端の錘にこめかみを斬られた。
       ……味な真似をしてくれる!目蓋に落ちる血を拭いながら、私は唇を噛んだ。
       勢いを失ったワイヤーは、剣を振ればすぐに床に落ちた。その頃には相手には随分と距離を置かれていた。逃がすまいと投げたナイフは敵を壁に縫い付けた……はずが、クロークのみを残し敵はするりと抜けてゆく。そして脇の通路へと身を滑り込ませた。
       押し込むか?YESだ。誘導にしろ、ここで退いては相手に余地を与えこちらの選択肢は削がれるばかりだ。幸い逃げた先は回廊とは逆方向。まだ分はある。
       奥の小さな扉が薄く開いていて、そこに潜んだと見えた。待ち構える暇など与えないよう急ぐ。
      「なっ…」
       城内に……いや、おそらく地下水路に侵入してから。私は始めて自分の声を聞いた。突如増した光量に一瞬視界を奪われ、目を細める。
       扉の先は広大なホールだった。右手奥の壁に巨大な両開きの扉が見える。柱の影となるこの場所はおそらく給仕用の出入り口か。
       二方向の壁一面、高い天井まで貼られた硝子の向こうには巨大な月が輝いていた。光に見据えられた私はまるで裸で戦場に投げ出されたかのような、そんな凍り付くような不安感と心細さに晒される。
       そして、月明かりにぼんやり浮かぶ敵のシルエット。滑らかな曲線の輪郭が影を落とし、それを直視した私は思わず身を竦ませた。青白い光を映しこんだ姿は、ともすれば吹き消えそうなほどか細い気配を纏いながら、その内には濃く粘り気のある殺意が渦巻いている。僅かな動作により薄い金糸の髪がゆらげば、そこから赤い双眸が覗いた。低い月の色と似た、赤が。
       敵の左手がこちらに向けられ、握られていた剣が真っ直ぐに飛んでくる。私は無意識に身を捻っていた。長剣の投擲など安定するはずもなく、そんなものに当たるほど愚鈍では無い。おそらくは囮だ。私は敵の第二波に備える。
       しかし敵はすぐには攻勢に移らかった。軽く腰を落とすと、右の掌に収まる剣を回転させ順手に持ち変える。そして空いた左手にはナイフを握り、防御の構えをとった。
       どういうつもりだ?
       
       鐘が、鳴りはじめた。時のひと巡りを告げる鐘の音が。

       同時に敵は鋭い一声と共に斬りかかって来た。しかし声は鐘の音に飲まれて消える。大胆に踏み込み、腕を張り、大きく薙ぎ払った。逆手の時よりもリーチを増したそれは私の目算を狂わせる。
       二つ目の鐘が鳴った。
       先ほどとまるで違う、支配領域を広くとる構え。刃と刃が躊躇なくぶつかり甲高い音を上げる。が、やはりそれも鐘の音にかき消される。遠心力を載せ放った私の一閃は左手のナイフで弾かれた。即座に離脱。が、追撃を逃れるには半歩足りない!
       三つ目の鐘が鳴る。
       肩口を斬られ私は悲鳴をあげた、のかもしれない。飲み込まれた音は私にすら届かない。
       ここに来て敵は驚くほど立ち回りを変えてきた。この広間では視界も広く、長剣を自在に振るおうとも妨げるものは何もない、が…。
       四つ目の鐘。
       大振りに操られる剣の軌道は、隙だらけに見えてまるで無駄がない。振り切った先でうかつに攻め入ろうものならば即座にカウンターが見舞われる。盾の変わりに構えた幅広のナイフはその役を十分に果たしていた。激しい剣戟も、足が床を打つ音も、最早なんの意味もなさない。
       五つ目の鐘。
       こちらのリーチ外からの突きを際で回避する。追撃を誘ってみたが、乗ってはこない。この状況下で迂闊に手を出す相手でもないのだろう。ならば。
       六つ目の鐘。
       強引に踏み込んだ一撃は敵に浅傷を作るにとどまる。その結果を知る前に私は敵の支配領域を離脱しアウトレンジに逃げる。
       七つ目の鐘。
       外套の下に忍ばせたナイフで狙う。敵の軌道を追いながら、あるいは先んじながら、時折調子をずらして。その一本が銀の燭台を跳ね飛ばした。だがやはり、音は無い。
       八つ目の鐘。
       ナイフでの投擲をやめ、再び手に剣を構える。それを見届けた敵は即座に切り返し、私に向かって走る。……蜘蛛に感情があるとすれば、今の私はそれと似た高揚を得ていたのだろう。敵の足にスピードが乗るタイミングを見計らい、すぐさま隠し持っていた最後の一撃を放つ。
       九つ目の鐘。
       虚を付かれた敵は、それでもナイフを弾いて見せた。しかし私は、なぎ払ったその刃が返る前に至近距離まで詰める。左手のナイフに阻まれるが、このまま押し切って見せる。
       十の鐘。
       刃の角をかけ敵の剣を跳ね上げる。弾かれた剣は中空にて弧を描いた。さながら月の輪郭をなぞる様に。得物を失い後退する敵を追撃。……しかし私はここにきて致命的なミスを犯していた。
       十一の鐘。
       その直後、閃いたのは敵の持つ左手の『盾』。それは本来身を守る盾ではなく確かな殺傷能力を持つ刃なのだ。……私は何故それを失念していた! 何時から敵の術中に囚われていた?
       十二の鐘。
       ナイフが私を捕らえる。急所こそ外したものの(あるいは外された?)わき腹を掠められ、そのままクロークごと柱に縫い付けられた。まるで標本に打ち付けられた羽虫のように。
       中空を舞い踊っていた剣が降りてくる。それは吸い込まれるように、真っ直ぐ天に掲げられた敵の手中に収まった。
       そして、月を描いたその切っ先は、今度は正面に私を捕らえる。
       相手が動いたと見えた時には、既に刃は私の喉元を掠め、石柱を抉る重い音とともに真横に突き立てられていた。

       ……鐘の音が、途絶えた。
       金属の音も床を蹴る音も発する声も。全ての音が一度に消えた。

       どうやら私は、ついに失敗したらしい。
       添えられた刃は息を呑むだけで脈を断たれかねないほどの距離に固定されていた。そして、月の色の瞳が間近に私を覗く。
      「お前の主の話を聞かせて貰おう」
       陰の気を纏う囁きを耳元でゆっくり注がれる。絡み付く悪寒に私はぞくりと身を震わせた。だが、どうやらすぐに殺されるわけでもないらしい。最もそれが幸いだと言えない事もあるのだが。
       敵の白い指が私のフードを掴み、それを一息に剥ぎ取った。敵は私の顔をしばし凝視すると、二度ほど目を瞬かせる。
       ……私と同じく、相対した敵が女だった事が意外だった?それとも、別の理由か。 
      「そう容易く聞けるとも思っていないだろう。こちらも商売なのでね」
      「商売か」
       辛うじて答えれば、微かな嘲りを含んだ声で復唱された。
      「その商売とやらをはじめて、何年経つ?」
      「……今の…主の元では…3年、だ」
       質問の意図を探るため思考を巡らせたものの、そんな余地も与える気はないらしい。僅かな猶予の内に不利益の可能性を弾き出せなかった私は、ありのまま答えるしかなかった。
      「そうか」
       平坦な声に潜むのは落胆だろうか。しかし初めから期待などしていなかったようにも感じる。何の望みも持ちはしないという、どこか達観した音だ。
      「ならば、お前の主がビェールリエス軍として出兵した際の事など、お前に問いただしても無駄なのだろうな」
       ビェールリエス……その名前には覚えがあった。8年前に滅んだ国の名のはず。城の主……即ち、今回のターゲットとも関わりが深い。その時の因果で私が来たと思っているのか?
       なるほど。先の彼女の反応は、私に情報源となる要素が欠けていた故のものなのだろう。8年も前の戦に関わるには若すぎるという事だ。
       しかしそれを理解してもまだ違和感は残る。
       初めの問いかけ。『お前の主の話』……とは、即ち誰の差し金か問いただす気なのだろうと私は捉えていた。
       だが、『出兵』だと?
       時に国家からギルドへ、非公式の依頼が極秘裏に入る事はある。戦場での諜報、偵察を初め様々な工作活動も含まれる。しかしそれを出兵と表現する事はまずありえない。
       何かが食い違っているのではないか。
      「無関係な以上手にかけたくはないが、障害になる要素を残すわけにはいかない」
       熱の篭らない言葉に、私は一度思考を中断させる。このままではまずい。背筋がざわついた。この先の手を誤れば即座に首が飛びかねない、そんな緊張感に鼓動が高鳴る。間近にある相手の肌からは一切血の熱を感じなかった。それどころか硝子に触れているような硬質な冷気を感じるのは、恐怖が齎す幻覚なのだろうか?
      「待ってくれ。貴方の主は」
      「私に主は無い」
       言い終わらぬ内に反論と、そして冷やかな視線に貫かれた。首の刃がほんの僅か接近した気がする。
       主は、ない。
       それが事実かは解からない。が、そう答えたという事は、少なくとも彼女はターゲットの子飼いでもなく、イレギュラーでもなく、全く別の介入者だったということか?
       額に触れた相手の指先は酷く冷たい。熱を奪うそれは、その繊細さからは信じられない力で柱に押し付けてくる。頭部を固定し喉を掻っ切る目算だろう。それが一番煩くないからだ。
       だがそんな事を甘んじて受け入れるわけにはいかない。いくわけがない!
      「貴方は、ひとつ誤解をしているようだ」
      「……」
       頭部を押し付ける圧力はそのまま。だが懐に挿しこまれた手は動きをとめた。
      「いや、違うな。私もだ。私も誤解していた。私の主はアローズ卿ではない。卿は主ではなく、要は商品だ」
       相手が僅かに表情を変えた。値踏みするような視線が私の前を繰り返し横切る。
      「私は、貴方こそアローズ卿の守備兵の一人なのだと思った。だがそうで無いなら、おそらく私は貴方にとっての障害にはならない」
       相手も同じように、私がアローズ卿……つまりターゲットの護衛と思っていたのであれば……それは即ち、相手の目的もまた卿本人だったと見える。……私と違って、ただ殺すだけとはいかないようだが。
       ならば、彼女の殺意も、問答も。全ては私ではなくターゲットに向けられたものという事になる。
      「命乞いか?」
      「有り態に言えばそうだ」
       真顔で言ってのければ、相手は微かに表情を緩めた。それを笑った、と表現する気にはとてもなれなかったが。
      「それが事実ならばその通り、お前は障害では無い。だがお前が嘘をついているかもしれない」
       淡々とした声。そして赤い月のような瞳。
       それらは死や苦痛といった物質的な恐れとは違う、意識の根元に直接触れるような恐怖を想起させた。不吉な予兆や暗闇に対するそれと似たようなものだろう。得体の知れないものへの肥大した妄想に取り憑かれ、そうと自覚しながらも暗示を払うことができない。
      「お前の言葉を信じるメリットがない。リスク回避のために死んでもらう方が良い……それを上回るメリットが無い限りは」
      「貴方は私に、出兵の事を問うても無駄だと、そう言ったが」
       無意識に語気が強くなる。相手の言葉を上書きせねばと焦っているのだろう。無様なものだと自分でも思うが、この状況で体裁など保ってはいられない。
      「アローズ卿に問うても同じことだ。彼にあの戦役の事をたずねたとしても、何も得る物は無い」 
       彼女の最初の問いは、タネが明かされて見ればまるで意味の違ったものになる。
       確かに私の中には彼女が求める宝など存在しないのだろう。だが、私がアローズ卿の子飼いであるという認識で問いかけが行われたならば、僅かながら彼女に有益な言葉を返すことはできた。
       相手の表情に変化はない。だが応答までの間で、思考する価値を与えられたのだと実感できる。
      「……何故そう言える?」
       ひとまず首の皮一枚繋がったようだ。
      「卿は出兵などしていないからだ」
       私はラルウァから聞いたアローズ卿の経歴を掻い摘んで話した。相手の気が変わらぬ内に話し終えねばならないのだから、自然と早口になる。
       アローズ卿の出兵は記録上のもので、実際には今日に至っても旧ビェールリエス領の国境を跨いだ事すら無い。既に戦況を見切っていた卿は上手く立ち回ったのだそうだ。交易で気付いた財力とツテにモノを言わせ、実際には動く事無く出兵を偽装し、そうする事で軍の総戦力を減らし、情報工作を行い、相手国を利する。対外的には傷つく事なく名誉を守って見せた。金銭的損害は莫大なものであっただろうが、今の状況を見ればそれも安いものだったのだろう。敗戦国に属していながらも、今の地位を保っているのだから。
      「ビェールリエス滅亡に関わる話が聞きたいならば他を当たる方がいい。危険を冒し問い詰めたところで、徒労に終わるのでは割りにあわないだろう」
       私の言葉に魔力があるなどという希望は微塵ももっていない。しかし、これは事実だ。事実である以上、別の事実とも何処かで連結される。
       ……全てはラルウァからの、仕事のたびにもたらされる『情報』の名を冠した与太話だった。およそ仕事とは無関係だろうそれらは何時も話半分に聞き流していたが、今日ほど感謝した事は無い。相手の中にある情報と噛みあい裏づけされれば、少なくともアローズ卿の手の者だという疑惑は晴れるだろう。次はもう少し真剣にラルウァの話を聞くとしよう。
       最も、今夜を切り抜けられればの話だが。
      「そうだとして」
       幾許かの時間を置いて返された声はやはり起伏が少なく、私はもはや彼女の声や表情から何かを得ようとする事を放棄しつつあった。
      「お前を見逃すメリットが無い事に変わりはない」
      「無駄なリスクを回避できる事を、貸しと思ってはくれないか?」
      「リスク? 無駄なリスクなら既に十分与えられた」
       言葉に詰まる。が、冗談(で、あって欲しい)を言う程度の余裕を引き出すことはできたのだろう。
       しばし睨み合いが続く。
       だが、もし。いざその時が来るならば。まだ相手の腕の一本程度なら道連れにする自信はあった。暗にそう告げるためにここで気圧されてはいけない。だが過剰に威圧してもいけない。その加減を誤れば即時私の負けだった。
       相手に動きはない。そろそろ私も腹を括る頃合なのかもしれないと、軽く息を吐き肩の力を抜いた。その、直後だった。
      「……いいだろう」
       剣が抜かれ、首を締めるられるような圧力が遠のいた。思わず短い呼吸が零れた。だがまだ動けない。些細な事でも相手に不審を煽る挙動をとれば、この距離からでも私の脈は断たれるのだから。
       壁に刺さったナイフを抜きながら、相手は私を振り返った。その抜いたナイフを懐に潜ませ、二振りの剣も納める。そんな無防備な姿の相手を前にしても、私は指一本動かす気になれなかった。
      「だが、長く商売を続けたいならば、仕事は選ぶ事だ」
       乱れた髪を撫でながら、相手は私を振り返った。そして切れ長の双眸をさらに細める。
      「もしお前が扱った商品とやらが、私の探し物だった時には」
       首筋に手を差し伸ばされ、私は思わず身構えた。今の相手の手には何ら得物は握られていない。にも関わらずだ。
      「お前を殺さなくてはならない」
       相手の指先が脈に触れる。ナイフよりも鋭利な殺意に射竦められ、ついに私は言葉まで封じられた。刃よりも鋭利な死の予兆を、今の相手の声音にこそ垣間見たのだ。
       急激に視界が暗くなった。気付けば硝子張りの壁の向こうには暗雲がかかり、月はその姿を消している。
       相手もまた私と同じく空を見上げていた。そして床に打ち捨てられた私のクロークを拾い身に纏う。
      「幸運を祈る」
       言葉のみを残しその姿は暗がりに溶けた。宵隠れの月のように、あるいは亡霊のように、一瞬で。
       途中一度だけ、ちらりと月が瞬く。しかしその直後には気配も存在も痕跡も、全てが消え去っていた。何の片鱗も残す事無く。
       まるで、最初からここには何も存在していなかったかのように。
       張り詰めた糸が切れた私は耐えられずその場に座り込んだ。気付けばひどく汗をかいていた。それが急速に冷え、全身の熱が奪われる。立ち上がろうにも筋肉が痙攣し、ままならない。どれほど歯を食い縛ろうにもカチカチと音が漏れる。ここで、こうしている場合ではないというのに。
       おそらく時間にしては僅かな間だったのだろう。だが、敵の懐の中と思えば考えられないほど長い時を、私はただ蹲っていた。


       その後に特筆すべき事はあまりない。
       幾度か危険な局面はあったが、それも先の遭遇と比べれば取るに足りない事でしかなかった。
       何にせよ私は無事、仕事を終えることが出来たのだ。今回も。



      「王家の亡霊(ロイヤルフィーンド)?」
       鸚鵡返しに問う私を、対面の椅子に座ったラルウァは疎ましそうな視線で見返してきた。そして、頬杖を付きながら蝋燭の火に葉巻をあてる。幾度かくるくると回した後、それを咥えた。
      「そ。ビェールリエス滅亡に関わったと思しき相手の前に突然現れて、謀反人かどうかを問いただす。そんなアサシンがいるらしいわね。王族の生き残りじゃないかって噂されているようだけど」
      「そんなもの、戦争で一儲けした権力者の類を風刺する、作り話じゃないのか」
       そうでもなければ、亡国に郷愁の思いを寄せた詩人による、ささやかな救いの物語か。
       素っ気無く返すと、ラルウァは口に含んだ煙を吹き付けてきた。独特の甘い香りに私は思わず顔を背ける。
      「私もそう思っていた。でも実際に会ったんでしょ?」
       そう問われれば頷くしかなかった。実際に言われて納得する部分も、ないわけではないのだ。 
      「戦時下での始末なんてそんなものよ。王の嫡子や血縁のものならともかく。末端に行くほど目は届かなくなるし、その余裕もなくなるし、処置も疎かになる。もちろん、そんな事絶対に公にはならないけれど」
       歳若い王女であれば、敵国に顔が知られていない事も在り得る。そして、国は滅び尊い血脈がその威光を失ったとしても、王女が敵の手に堕ちる事を不憫に思う者は少なからずいるはず。
       そうやって歴史の隙間を生き続ける血は、現実にあるのかもしれない。最も、それが王家を再興する……などと言う話は、大半が詩集の中に存在するのみだろうが。
      「そうね…アルジエ公爵家に一人、死の確証が取れてない王女がいたはず。上がった死体が本人かどうか、疑惑が残ったパターンね。他にも何人かいるけれど……あんたの話を聞く限りじゃ、一致しそうなのはそれくらいかしら?」
      「名前は?」
      「気になる?」
       他愛無い問いかけのつもりだったが、切り返されて初めてその違和感に気付く。
       何時もなら何も言わなくても勝手に喋るものを、わざわざ焦らすという事もラルウァには珍しい。が、彼女にして見れば、なにを話そうとも相槌を打つばかりの私が問い返した事こそ珍しいと思ったのかもしれない。
      「……多少は」
       低く答えればラルウァは面白く無さそうに再び煙を吐く。彼女の顔が曇る程度に撒かれた煙に、私は軽く咳き込んだ。
      「ヴァローナ。ヴァローナ・ドゥーケ・アルジエ」
       不意を付いて呟かれた名に、私はあえて気のない返事だけを返した。
       その名の響きと、黒衣を纏い剣を携え月下を駆る、あの姿を重ね合わせながら。
      「今度見かけたら呼んで見ればいいじゃない? ヴァローナ・プリンツェッサって」
      「やめてくれ!」
       拒絶の声は半ば悲鳴に近かったのだろう。わざわざ隣室からこちらを覗きに来る顔まで見えた。
       だが実際にそんな事をしたらどうなり得るのか、想像するのもごめんだった。
      「ま、噂通り、亡霊の正体が本当に王族の生き残りなら……だけど、ね」
       そう、結局、全ては推測の話。真実は分からないままなのだ。
       私が出会った敵が、『王家の亡霊』と呼ばれる暗殺者であったという、それ以外の事は。 
      「何にせよ良かったじゃない、お仲間に会えて。ねえ、幽霊(レムレース)?」
       私自身の呼び名をあてられ、こめかみが僅かに痙攣した。今更その呼び名に嫌悪を感じる事は無いが、そう揶揄されるのは面白くない。
      「噂の目撃者になれるなんて運がいいわ」
      「冗談じゃない」
       愛想で笑ってやる気にもなれなかった。ラルウァがどうかは知らないが、私はスリルを楽しむためにこんな事をしているのではない。誰が好き好んで危険を冒すものか。選ぶ余地があるものなら温い仕事を選ぶに決まっている。
       しかし、ならば。
       亡霊はどうなのか。
       仮にも王族ならば、例え民草に堕ち様とも、かつての栄華さえ捨てられれば何処でだって生きて行けるはず。剣の腕ひとつ取ってもそう、それだけの素養を持ち合わせているはずだ。
       だがそれを望まず、現世を捨て、亡霊となった。
       その先に何を望んでいるのか。あるいは望みなど超越した怨讐に囚われたか。
       考えたところで答えなど解かるはずもない。もしかしたら本人にさえも。
      「それにしてもあんたも使えないわね。生け捕りにしてくればいい値がついたのに」
      「他人事だと思って言ってくれるな。危うくこっちが殺されるところだったというのに」
      「いいじゃない。幽霊が亡霊にとり殺されたなんて素敵だわ。滑稽で」
       含み笑いで私の反応を伺っている。怒るか、嫌がるかすれば彼女は満足なのだろう。
      「ま、せいぜい、腕を上げなさい。次はとり殺されないように」
       次、との言葉に冷や汗が滲む。そう、この界隈にいる以上、それは脅しでもなんでもなく起こりうる事なのだ。だが。
       どうか、誤って、亡霊の探し物を売り払ってしまったなんて事にならないよう。
       それを祈るばかりだった。

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